| 平成元年の高校選手権男子個人戦の決勝は劇的な幕切れだった。 |
| ▲茂木謙雄(浦和3年) △須田庸夫(川越3年) 対局場 : 大宮中央総合病院講堂 |
| 当時の観戦記によれば、茂木君は優勝候補の最右翼、須田君はダークホースだったそうな。 |
| 将棋は先手の茂木君が左美濃から攻めまくり、終始押し気味に進めていた。 |
| 第1図は先手が▲7二竜と必至をかけ、後手が最後のお願いで△7五桂と王手したところ。 |
| 『さあ、こうなれば後手は何がなんでも先手の王様を即詰みに討ち取るよりほかに勝ちはない。 |
| 危ない形ではあるが、どうやら即詰みの順はなさそう。 ただ問題は秒読みに追われて、先手が |
| 受けを間違えるようなことがあっては―』 (観戦記より) |
| 若い2人の心臓はバクバクだったに違いない。 |
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| 【第1図以下の指し手】 ▲9七玉△8八角▲同玉△7六桂▲9八玉△8七銀▲同銀△9七香 |
| ▲同桂△8九角(第2図)まで須田君の勝ち |
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| 第1図で▲7五同歩なら先手玉は詰まなかったが、秒読みのさなか茂木君は△5四角の王手竜が |
| チラッと脳裏をかすめたのかもしれない。 |
| そこで▲9七玉と逃げた。 |
| 自分が指していたら思わず「詰まんでくれー」と祈ってしまいそうだ。 |
| しかし「将棋は最後に悪手を指した方が負けるゲーム」とはよくいったもので、△8八角以下は先手が |
| どう応じても詰んでいる。 |
| △8八角に▲9八玉と引く変化が一番長いが、それも△9七香▲同桂△9九角成▲同玉△6九竜 |
| ▲同銀△8八銀▲同玉△7六桂で後は並べ詰み。 |
| また最後から3手目の△9七香に▲同玉と取るのも、△8八角▲9八玉△9九角成▲同玉△9七香 |
| (変化図)で助からない。 |
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| 『先手にとっては泣いても泣き切れぬ惜しい一番だった』と観戦記は結んでいる。 |
| まさに同感。 |